クルマやバイクをメンテナンスするには、必要に応じて工具を使い分けないといけないボルトやナットがたくさんあります。
例えばクルマの内装インパネ周りやバンパーやフェンダーの取付部分、あるいはエンジンルーム内ではラジエターやウォーターポンプ周りのネジを外そうとした場合はどうでしょうか?
このような狭くて手が入らない場所やハンドルの振り幅が制限されているようなところ、また角度の変化が必要な時には、通常のソケットレンチの組み合わせだけではうまく使えない場合がよくあります。そこで、このような手狭な所にあるボルトやナットに対しても、威力を発揮して、その作業効率を高めることができるハンドツールをいくつか紹介します。

【ユニバーサルジョイント】

ボルトやナットに対して直線的に対処することができず、角度が必要なときに便利なツールがユニバーサルジョイントです。使い方は、ラチェットハンドルにエクステンションバーを付け、その先にユニバーサルジョイント、そしてソケットをつけるというのが一般的です。もちろんソケットと同様に、差込角の大きさにより1/4インチ(6.35ミリ)、3/8インチ(9.5ミリ)、1/2インチ(12.7ミリ)と分類されます。

ユニバーサルジョイントは、凹(メス側)差込角と凸(オス側)差込角の2つのパーツの連結によって構成されています。そのジョイント部の連結方法によって大きく2つに分けられます。その違いを当社の3/8インチ差込角の商品を使って説明します。

●通常のユニバーサルジョイント
(品番2731000、価格1,670円)
凹側(メス側)の差込角と凸側(オス側)差込角の間に立方体状のパーツを介して固定しているもの。固定の方法にも、ピンでかしめられているものと、ネジによって止められているものと2タイプあります。ソケットレンチセットの中に必ずといってよいほど入っていて、多数派がこのタイプ。特徴として首振りの角度が大きくとれるというメリットがありますが、全長が長くなってしまうというデメリットもあります。

●フリーアングルユニバーサルジョイント
(品番2730000、価格 2,260円)
差込角の下底部がボール状に加工してあり、その中央部に貫通穴があけられている凸側のパーツと、差込角の間に円すい状のバネがセットされている凹側のパーツからなり、2つのパーツを貫通穴に一本のピンを入れてかしめているもの。特徴として首振り角度が大きくとれないというデメリットがありますが、回転する動きがスムーズで全長が短くできるというメリットがあります。

また上記のユニバーサルジョイントとよく似た構造を持った、ユニバーサルジョイントソケットという便利なツールもあります。これは、凸側(オス側)差込角のパーツの代わりに、六角ボルトやナットを回すためのソケットが連結しているものです。
ソケットと同様にユニバーサルジョイントソケットにも10、12、13、14、17ミリといったサイズが揃っています。角度の変化が必要な時に、わざわざユニバーサルジョイントを連結することなく、ダイレクトに角度を付けることができるという優れものです。従来のソケットとユニバーサルジョイントを連結した状態よりも、23mmも全長を短縮することができます。
(当社14mmで比較の結果)

プロの整備士にとっては、知名度・使用率も高いですが、製造メーカーが限られているせいもあり、あまり一般的に知名度は高くないようです。
ユニバーサルジョイントソケット14mmのスペックをブランド別に比較した結果は右表1の通りです。
スナップオンは、ソケット形状が6角タイプと12角タイプの2タイプ揃っていて、お好きな方を選ぶことができます。またネプロスは、全長が39.5mmというコンパクトなボディを実現、機能性は高いといえます。
当社Pro-Auto商品も、価格面では両者の約1/3という非常にリーズナブルな価格を実現しています。また、多くのメーカーのジョイント部分がピンによってかしめられているのに対して、当社の場合は、ネジ止めされているため首振りのゆるさ・硬さの調整ができ、また分解・修理が可能であるというメリットがあります。

【左側】
凸側(オス側)の差込角の下底部が、ボール状に加工され、その中央部に貫通穴があけられており、凹側(メス側)の差込角側の間に円錐状のばねをセットしピンでかしめられている構造。
【右側】
凸側(オス側)と凹側(メス側)の差込角を立方体を介して2本のネジで固定されている構造。

【左側】
通常のユニバーサルジョイントにソケット14ミリを連結させた場合の全高69ミリ。
【右側】
ユニバーサルジョイントソケット14ミリの全高46ミリ。
比べると歴然!その差なんと、23ミリも。





※T型ラチェットドライバー
コンパクトな形状とラチェット機構付で早回し作業に優れています。

【ドライバー類】
狭い場所において通常のドライバーでは、その長さが邪魔してグリップ部分があたってしまい、うまく使えない場合がよくあります。このような状況下では、おもに次のような工具の出番となります。

●スタビードライバー
『Stubby(スタビー)』とは、日本語に直訳すると「切り株のようなずんぐりとした」という意味。通常のドライバーでは使えないような狭い場所でも使うことができるように全長が短く設計されています。サイズは、たいてい+字のNo.2のものが多いのですが、一口にスタビードライバーといっても、グリップの太さや全長もさまざまです。また
+字と-字の差し替え式というものもあります。

●L字型ドライバー
単にL型ドライバーと呼ばれることもあります。ドライバーのグリップ部がなく、軸がL型に曲がっている形状が特徴。

●T型ラチェットドライバー※
ラチェットハンドルの差込角の代わりに、ドライバーの先端部が付いているもの。コンパクトな形状とラチェット機構付きで早回し作業に優れています。

しかしながら、ソケットで六角ボルトやナットを回すのと違いドライバーというものは、回すだけでは使うことはできません。つまり押さえながら回さないとドライバーの刃先がネジの頭の外へ逃げようとするカムアウト現象が発生するからです。スタビードライバーやL字型ドライバーやT型ラチェットドライバーにしても、狭い場所での作業性に優れているのですが、通常のドライバーに比べて押し付けながら回すことが難し いため、ネジ山をナメないように注意しなければいけません。また狭い場所のためネジを斜めに締め付けてしまうことも考えられますのでこの点にも気を使わなければなりません。


※直角ラチェットドライバー
ワンウェイベアリングを採用しているため、ワンストロークの振り幅が限りなくゼロに近い。このため狭い場所でもスピーディーに作業できます。

● 直角ラチェットドライバーセット※
(当社品番64250、小売希望価格4,800円)
・ワンウェイラチェットハンドル
(全長100mm、ベアリング径6.3mm)
・スクリュードライバー +No.2(軸径6.3mm)
・スクリュードライバー -6mm(軸径6.3mm)
・ソケットアダプター(6.35mmソケット用、軸径6.3mm)
の4アイテムで構成されています。
ソケットアダプター以外は、アメリカのブランドLisle社のもので、当社製造の専用ソケットアダプターを加えてオリジナルセットで販売しております。
本製品には以下のような大きな三つの特徴があります。
まず一つめの特徴はスタビードライバーやL字型ドライバーでは、押す力が十分に発揮しにくいのですが、スクリュードライバーとワンウェイラチェットハンドルを組み合わせて使うことによって、左手でスクリュードライバーの頭部分を押さえ、右手でワンウェイラチェットハンドルをストロークすることによってネジ締め作業を行うことができます。このためネジに対して垂直にフィットして確実に力を伝達させることができるわけです。

ニつめの特徴は、ワンウェイラチェットハンドルの回転部にはワンウェイベアリングを採用しているため回転が片側一方向のみということです。つまり正転と逆転の切り替えは、ワンウェイラチェットハンドルのベアリング部にスクリュードライバーをどちらから差し込むかによって決まります。通常のラチェットハンドルは、その構造上ギアとクラッチ爪が噛み合うことによってカチカチというギア音が発生します。これに対して直角ラチェットドライバーセットの場合には、通常のギアとクラッチ爪の部分にワンウェイベアリングというものを採用しているためカチカチというギア音は全くありません。また送り角というものは、例えばギア数が40であれば9度、ギア数が72であれば5度というぐあいにワンストロークの振り幅の角度によって決められます。これ対して直角ラチェットドライバーの場合はギアがない構造(無段階ギア構造)のためワンストロークの振り幅が限りなくゼロに近づくわけです。このため狭い場所でもスピーディーにストロ−クすることができ、作業性に優れています。

三つめの特徴は、市販されている丸軸の全長150mm程度のスクュードライバー(注1 丸軸径6.3mmのものに限られます。ただ し-字は例外あり。)とワンウェイラチェットハンドルを組み合わせて使用することができるということです。このメリットは、通常のスクリュードライバーでは回すことができないような固く締まっているネジや、障害物がありうまくグリップを回転させることができない場所(例えば壁際ぎりぎりでの作業等)や作業する上で力が入らないような場所(例えば高所での作業等)でも、一方のスクリュードライバーを押さえ付けながら固定し、もう一方のワンウェイラチェットハンドルをラチェット感覚でストロークすることができるため、大きなトルクを与えることができ、また作業の効率もアップさせることができるという点です。

【チェンジャーソケット&ビットセット】※
狭くて手が入らないような場所では、通常のソケットレンチの組み合わせだけではうまく使えない場合がよくあります。目的の部品を脱着するには周辺のパーツを外してから作業を強いられることも実際多いことでしょう。今、通常のソケットレンチといったのは、差込角3/8インチのソケットやラチェットハンドルそれにアクセサリー類のことです。一般的にクルマやバイクの場合、8ミリから19ミリといった二面幅サイズのボルトやナットがほとんどですから、ソケットの守備範囲から言っても差込角3/8インチのソケットレンチにメガネレンチさえあれば何とかなるはずです。しかし8、10、12ミリといったクラスのネジの場合には、差込角1/4インチのコンパクトな設計のものが使いやすく、狭い場所での作業にも適しています。メンテナンスの際に登場する出番は3/8インチほど多くはありませんが、持っていると絶対に損のないツールです。だからもう少し差込角1/4インチのツールセットの存在も見直してみてもいいのではないでしょうか?

そこで差込角1/4インチのツールセットの中でも、
従来のスタンダード品とは少し変わった形状の商品『チェンジャーソケット&ビットセット(当社品番CS2114)』 を紹介します。

普通のラチェットハンドルといえば、差込角部分が出っぱっていて、この部分にソケットや他のアタッチメントパーツの差込角部分(凹側)を差し込んで連結させますが、本商品の場合は差込角部分の凸と凹側が通常のものと逆の形状をしています。すなわちラチェット側が凹形状で、ソケット側が凸形状というわけです。だからラチェットハンドルのヘッド部分にソケットを押し込む形で連結するため、従来にはないような超コンパクトサイズのヘッド全高を実現しました。ちなみにこの連結方法のおかげでどれくらい全高が低くなったかというと、

★ソケット使用時
1/4インチ差込角のラチェットハンドルにソケット10ミリを連結すると全高が35ミリなのに対して、チェンジャーソケットセット10ミリの組み合わせでは全高が20ミリというコンパクトさ。

★ ビット使用時
ドライバービット使用時には、ビットホルダーにドライバービットを挿入して1/4インチ差込角ラチェットハンドルに連結すると全高が55ミリなのに対してチェンジャーソケット&ビットセットの専用ビットを使った場合には27ミリと半分以下の数字となります。
(当社従来品との比較)(※資料ページ参照)

ソケットは全高をギリギリまで低く抑えた特別な形状のためナット専用というマイナスポイントもありますが、付属のアダプター(6.35ミリ四角)を使用すれば、スタンダードラチェットにも変更でき、市販のソケットやディープソケットも使うことが出来ます。

通常のソケットやラチェットハンドルだけのレンチの組み合わせでは、早く確実にハンドルの操作をできるのは、余裕のある広い空間だけに限られてしまいます。とにかく狭くて手が入らない場所やハンドルの振り幅が制限されているようなところでは活躍の場が期待できます。もうすでにスタンダードの1/4インチ 差込角のツールセットを持っている方も、また現在3/8インチしか持っていない方も少し変わっていて面白く、なかなか便利な『チェンジャーソケット&ビットセット』を選択してみてはどうでしょうか!