【お手軽SSTのスナップリングプライヤー】
様々なメカやパーツがひしめき合っている最近のクルマやバイクは、決まりきった普通のハンドツールだけではなかなか思うような作業ができないことがよくあります。このようなときに出番となるのがSSTと呼ばれる特殊工具です。
SSTとは、Special Service Tool(スペシャルサービスツ−ル) の頭文字の略で、一般のツールではどうしても作業が出来なかったり、作業するのに長い時間を費やしてしまう場合など、作業効率を向上させる目的で開発されたものです。
しかしこのようなSSTなるツール、今すぐすべてを買い揃えないといけないという性格のものではありません。メンテナンスの上達やどこまで作業を行うかによっても変わってくるため、やはり必要に応じてその都度充実させていけばよいものと言えるでしょう。またSSTには大きく分けて2種類あり、限られたメーカーや車種にしか使うことの出来ない狭い意味での特殊工具と、汎用性のある広い意味のものがあります。
前者には各種プーラー類やオイルフィルターレンチなど、後者にはネジ山修正機やショックドライバー(インパクトドライバー)やトルクレンチといったものがあります。特殊工具と呼ばれているツールが故に価格的にも高額で、プロのメカニックだけに限られるものと思われがちですが、量販店やDIY店でもよく見かけることができるお手軽なSSTも数多くあります。
スナップリングプライヤーは、C型形状をした止め金具のスナップリングを脱着するツールです。エンジンのピストンや各種ベアリングの抜け止めとして、またハンドツールの中にもスタッドプーラーや一部のラチェットハンドルのストッパーとして使用されているなど結構よく見かけることが出来ます。これらを脱着するにはラジオペンチや細いマイナスドライバーでも何とか代用することもできますが、さすが“そのための専用ツール”だけあって、その作業性のよさは比べようもありません。
通常スナップリングプライヤーには大きく分けて軸用(EXTERNAL)と穴用(INTERNAL)の2種類があります。
●軸用(EXTERNAL)
スナップリングが軸の回り(軸上)に付いているものに用いるもので、スナップリングプライヤ−のグリップを握ると先端が開いて脱着するものです。
●穴用(INTERNAL)
スナップリングが穴の中に入っている場合のもので、グリップを握ると先端が縮まり外れるものです。
またスナップリングプライヤーには、上記のような軸用・穴用(開け、閉め)に加えてC型スナップリングの両端部分の穴径に合わせて先端部のサイズが色々と異なっています。この先端部のことをクローやチップと呼ぶのですが、その直径は1.0、1.2、1.3、1.5、1.8、2.0ミリなどの様々なサイズがあります。スナップリングをスピーディーにかつ確実に脱着させるためには、グリップ中央部のスプリングバネと握った時の安定感に加えて、この先端部のクローがきっちりと作られていることがこのツールの鍵と言うことができます。強靱な材質はもとより、その形状にバックテーパー加工(逆テーパー)を施しているものが、スナップリングの穴からクロ−が外れにくく確実に作業するのに有利なことは間違いありません。
ところでスナップリングプライヤーなるもの、軸用・穴用に加えて色々なサイズのものをすべて買い揃えるのは種類も多く金銭的にも大変なことです。そこで軸穴兼用(開け閉め両用)に加えて、先端クローを付け替えるタイプは、色々な大きさのものにも対応することができ、また先端部が磨耗しても交換可能できるというメリットもあります。軸穴兼用タイプにも色々あって、鉄板を打ち抜いて作った軸穴専用のプレ−トをセンターピンで簡単に止めているものなどは、ハッキリ言って使い勝手はよくありません。しかし各メーカーによっては工夫をこらしたおもしろい商品もあります。それでは具体的に2つほど紹介します。
●新潟県のマルト長谷川工作所(KEIBA製品)
世界7カ国に特許を持ったその独特な形状は、従来の常識を打ち破ったもので昭和57年の通産省選定のグッドデザイン商品ともなっています。
軸用の直・曲、穴用の直・曲の四通りに使い分けをすることができます。
●アメリカのチャネルロック(CHANNELLOCK)※
グリップにライトブルーのビニールコーティングを施していることで有名な総合プライヤーメ−カ−。先端クローは付け替えタイプで五種類が標準装備されており、色でサイズを判別できるようになっています。また軸用、穴用の切り替えもスライダ−を操作することによってワンタッチで簡単に切り替えることが出来ます。(特許)
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