工具というものは、クルマやバイクいじりには欠かせない必需品。
中でもソケットツールと呼ばれるものは、手や指先だけではどうにもならないネジに対しても大きな回転力を与えることができる道具です。

ソケットツールの中には、直接ボルトやナットと対決するソケット(コマ)をはじめ、ラチェットハンドル、ユニバーサルジョイント、スピンナーハンドル、エクステンションバーなどがあるわけですが、これらはすべて単体では全くといっていいほど用をなしません。すなわちソケットと各種ハンドルやアタッチメントを組み合わせてはじめて使用することができるわけです。そしてラチェットハンドルと組み合わせることに よって、他の工具に比べて使用頻度がずばぬけて多くなります。

それでは主なソケットツールについて順にもう少し詳しく解説するとしましょう。

●ソケット(Socket)
スパナやモンキーレンチは、口の一部が解放状態になっているので、通常オープンレンチと呼ばれるのに対して、六角ボルト・ナット用のソケットやメガネレンチは、ソケットレンチと呼ばれることがあります。ソケットの形状はボックス状で、一部が解放のものと違って、ボルト・ナットを完全に抱き込んだ状態で使われます。このため滑ったり外れたりしにくく、大きなトルクを出すことができるという点が特長です。また、ソケットはラチェットハンドルと組み合わせることで、そのラチェット機構によってメガネレンチやスパナにはできないスピーディーな作業、つまりボルトやナットに対していちいち掛けかえることなく、はまり込んだまま作業できるので早回し効果は抜群です。

通常ソケットには大きく分けて2種類あり、使うボルトの形状によって六角ボルト・ナット用と六角穴付きボルト用(注1)があります。しかしソケットの種類はこれだけではなく差込角のサイズによって1/4、3/8、1/2などのサイズによっても区別されます。また全長の違いによって、標準タイプのスタンダ−ドソケット、標準タイプより長いディープソケット、またメーカーによってはその中間サイズのセミディ−プソケットがあります。当社の場合には、標準タイプより短いショート(シャロー)ソケット(参考資料※1)というものがあります。

上写真左より
シャローソケット(標準タイプソケットより
短い
スタンダードソケット(標準タイプソケット)
ディープソケット(標準タイプソケットより長い

※参考資料1
No.101-31SM
3/8"DR.差込角9.5mm
7PC.シャローソケットハンガーセット
8-10-12-13-14-17-19mm
定価3,800円

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一口にソケットといっても、バリエーションが多くそれぞれに得意な作業があります。
場面に応じて使い分けることにより効率的な作業ができるわけです。
またソケットにはボルトの頭やナットをつかむところ(内側)にも6角タイプと12角タイプの2つの形状があるのですが、
『あなたならどちらのタイプを選びますか?』

12角タイプのメリットは、相手のボルトやナットに対してすんなり入れやすいということです。
具体的な数字で言うと、円周360度に対して12角タイプは、これを12で割って30度
つまり振り角度が30度あれば、ボルト・ナットを回すことが出来ます。
一方の6角タイプは円周360度を6で割って60度
つまり振り角度が60度必要となり、12角タイプの2倍必要ということです。このように12角タイプは、扱いやすさの点では6角タイプより優れているといえますが、逆にデメリットもあります。それは、強度と耐久性の問題です。過度のトルク(耐荷重)をかけた時は、相手のボルトの頭やナットの6角部分を傷めやすいということが言えます。現在、どちらかと言えば扱いやすさの12角タイプよりも、ボルト・ナットの角を傷めにくい6角タイプのソケットが主流のようです。しかし、大半のメーカーでは両方のタイプを製造しており、基本性能においてほとんど差がありません。

『私は12角タイプのソケットの形状が好きだ』という好みで選んでもみてもいいのではないでしょうか?
道具・工具というものは、思い込みで使うもの。
しっかりと作られたソケットメーカーのものであれば、どちらを選んでもきっと後悔はしないでしょう。


●ラチェットハンドル(Ratchet handle)
ラチェットハンドルほどハンドツールの中で一番メカニカルで、使って便利で楽しいものはないでしょう。カチカチという小気味よいラチェットの回転音や、切り換えレバー操作のフィーリングだけでも十分楽しめます。おそらくクルマやバイクをいじりたいと思う人が、もっとも欲しがるツールのひとつでしょう。

実際にバイクやクルマに使用されているネジをはずそうとする時にも、始めに考えるのが、
 ラチェットハンドルとソケットの組み合わせで使えそうか?
ではないでしょうか。もし使えそうにないなら、
 メガネレンチか?
それでもだめなら
 スパナか?
といった優先順位で工具を使うことでしょう。
これはラチェットが持っている抜群の作業性、すなわちボルトやナットからハンドルをいちいち掛けかえることなく連続的に作業をすすめることができるという作業のスピーディーさがあるためです。

それでは、こんなに便利で楽しいラチェットハンドルにはどのような種類があるのでしょう?これからラチェットハンドルの種類と特徴について説明します。
まずヘッドの形状から大きく2つに分類されます。
 ひとつめは、小判型(別名だるま型)。
 もうひとつは丸型。
小判型には左右の切り換えレバーが付いているので、作業中に右にまわ しているのか、左にまわしているのか(ONかOFF)が目で見て確実に確かめられます。また切り換えレバー操作が片手でできるというメリットもあります。しかしデメリットととしては、ギア数の少なさと、一般的に丸型よりもヘッドの形状が大きいことです。

一方、丸型はギア数の多さからラチェットの作動する角度が細かく、ギア数72山(注2)のタイプもあって狭い場所での作業には最適です。フランスのファコムやイタリアのベータがこのタイプに分類されます。しかしデメリットととしては、ラチェットの切り換えに両手を使わなければならないことと、目で見て右まわしなのか、左まわしなのか(ONかOFF)確かめられないということがあります。(ベータは例外、ワンハンドで切り換え可能です。)
また一般的には小判型は丸型よりヘッド形状が大きいのが常でしたが、
当社製品のスーパーコンパクトシリーズのラチェットは、コンパクトサ
イズで、左右切り換えも目視で確認できるタイプを発売しています。
※ 参考資料2

参考資料2スーパーコンパクトシリーズのラチェットハンドル

◆ラチェットハンドルのグリップ形状

さらにラチェットハンドルは、工具メーカーによってグリップの形状や仕上げ、また長さのバリエーションが色々とあります。手の中におさまってしまうくらいのショートタイプや、ハンドルの根元が折れ曲がるフレックスタイプといったものもあります。そんな多種多様にあるラチェットハンドルを選ぶ上で、ひとつのポイントになるのがグリップ形状です。ラチェットハンドルのグリップ形状は大きく分けて次の4タイプに分類されます。

1.樹脂柄タイプ
2.ローレット加工タイプ
3.総磨きミラータイプ(鏡面仕上げタイプ)
4.ゴム柄タイプ

一般的に日本人は金属むき出しの総磨きミラータイプとローレット加工タイプの使用率が高いようです。特に総磨きミラータイプが日本人好みかどうかわかりませんが、日本の市場においては圧倒的に多いようです。総磨きミラータイプは汚れた時にさっとウエス(ぼろ布やタオル)で拭き取ることができ、またローレット加工タイプは油手や手袋をした状態でも滑りにくいというメリットがあります。

しかしヨーロッパやアメリカではゴム柄や樹脂柄といった握りやすさや力の入れやすさを考慮したグリップ部をゴムや樹脂で覆われているものが人気があります。特に北欧などヨーロッパの寒い国においては好んで使用されているようです。

グリップ部分は直接握って力を加えるところなので、この形状の善し悪しが大きく作業性を変えてしまうと言っても過言では無いでしょう。しかしどれがベストかということは、人それぞれ手の大きさも形状や色彩の好みや使用感も異なりますので一概には言うことはできません。でもやや太めのグリップのほうが力を加えやすいのは確かです。だからネプロスの極太のグリップも見た目のスタイルは好みが別れるところでしょうが、握った感じは手にしっかりとフィットしなかなかのものです。

また握り心地という点では金属むき出しよりソフトな感じの樹脂グリップの中でもイタリアのBetaのオレンジ色やアメリカのMacツールの赤や黄色、Snap-onの蛍光色など、カラー化のトレンドも見受けられます。
当社のPro-Autoフルタ−ンラチェットとフルターンソケットハンドルも差込角のサイズおよびソケットのサイズを識別しやすいように、それぞれ色の異なる滑りにくい樹脂性カラーグリップを採用しております。
ちなみにグリップカラーは以下の通りです。

●フルターンラチェット(※参考資料3)
   サイズ【差込角】   グリップの色
1/4インチ(6.35ミリ) ・・・ブラック
3/8インチ(9.5ミリ) ・・・ブルー
●フルターンソケットハンドル
8ミリ・・・グリーン
10ミリ・・・レッド
12ミリ・・・イエロー
14ミリ・・・ワインレッド

ラチェットハンドルは数あるハンドツールの中でも使い勝手や機能性またその外観から見ても花形選手的な商品でバリエーションも実に豊富。
いざ購入する時には種類が多くて迷ってしまいそうですが、選ぶ際のポイントとして握り心地がソフトで力の入れやすい樹脂グリップも今後ぜひ注目してもらいたい。いずれにしても自分の好みのラチェットハンドルを1本見つけて、それを中心に使っていけばツールに対する愛着もわき、またバイクやクルマのメンテナンスの楽しさもよりいっそう広がっていくことでしょう。

※参考資料3
スペック、価格表はこちらへ



●フレックスハンドル(Flex handle)
ソケットツールには1/4、3/8、1/2インチと言った差込角の区別があるわけですが、なぜこれらの区別が存在するかと言うと、それは締め付けトルクと作業性に深い関わりがあります。一般的には差込角の小さいものはコンパクトな形状で狭い場所での作業に適し、差込角が大きいものは強度的に頑丈で大きなトルクを与えることができます。

通常ソケットのサイズで言えば差込角3/8インチの守備範囲は6ミリから24ミリ。
バイクやクルマをメンテナンスするのは一般的に3/8が適しているといわれるのはこのような理由からです。実際に3/8のツールを中心にメガネレンチやスパナやペンチやドライバーといった必要最低限のものが揃えば、オイル交換をはじめ大半の定期交換パーツの取替作業も可能です。

しかしどうしても3/8インチのハンドルでは力不足でネジが緩まないという状況が発生する場合があります。こんな時には差込角の大きい1/2インチのハンドルやインパクトレンチあるいはショックドライバー等を使用するといった方法がありますが、もしこのようなツールを持ち合わせていない場合はみなさんはどうしますか?

もちろん正しい使い方ではありませんが、おそらくハンマー等で衝撃を加えたり、あるいはハンドルにパイプを繋いで力を加えるのではないでしょうか?しかしこのような使い方をする場合には、使用するツールが破損する恐れがあることを考えなくてはなりません。そこで次の様な配慮が必要となります。
まず壊れる率が低いものを使用するということです。つまりメガネレンチのような1本構造になっているタイプのものを使ったり、あるいは限界能力の高い差込角のできるだけ大きいものを使う。あるいは壊れてもいいような安物工具を使う。このような点に気を付けるだけでもツールの破壊の危険から少しは解放されるわけです。

そこで3/8インチのハンドツールではどうしようもないような固く締まったネジを外そうと時、つまり大きな回転トルクを必要とする時に、威力を発揮するツールが長い(ロング)フレックスハンドルなんです。

今、フレックスハンドルと書きましたが、名称については各メーカーによって異っています。
当社Pro-AutoMACtoolではフレックスハンドル(FlexHandle)、
Snap-onではブレーカーバー(Breaker Bar)、
STAHLWILLEではフレキシブルハンドル(Flexible Handle)。
そして国内の主なメーカーはスピンナーハンドル(Spinner Handle)と呼ばれています。
なぜ日本でスピンナーハンドルと言われている所が多いかと言うと、日本で紡績業が全盛期の頃、スピンナー(紡績工)が紡績機械のメンテナンスによくこのレンチをよく使っていたことから来ているようです。(以後の文章ではフレックスハンドルと呼びます。)

フレックスハンドルはラチェットハンドルのような複雑な機構を持たない極めてシンプルな構造です。一般的な構造はハンドル本体の先端部分にU字型の溝があり、その間に90度強左右に曲がる差込角部を連結しているものです。また通常の3/8インチのフレックスハンドルは全長が225ミリから250ミリ、長いもので300ミリや380ミリといったロングタイプがあります。ラチェットハンドルの全長が通常180ミリから200ミリだからソケットレンチの中では一番寸法が長く、その
分だけ大きなトルクを加えることが出来るツールなのです。しかし逆に差込角が3/8インチなのに全長が1/2インチと同等の長さがあるということは、単純に言えばオーバートルクが原因で簡単に破損してしまう恐れがあるということです。つまり差込角が破損するまでの限界というものは、あくまでも3/8インチのものと同じだということを肝に銘じておかないといけません。

※ 参考資料4
789N・mニュートンメートル(80kgf・m)という高い限界能力を実現した新型ロングフレックスハンドル
特に足回りのメンテナンスなどに威力を発揮します。

そこでお勧めしたいのは1/2インチのロングフレックスハンドルです。うんと固く締まっていて大きなトルクが必要な場合には、最初から限界能力が高くて余裕のある差込角の大きなものを使った方が確実に作業を行うことができるからです.。
当社の1/2インチのロングフレックスハンドル(※参考資料4)は、通常の一般的なものと構造が少し異なっています。それはハンドル本体の先端部分を平らに削り、その平たい部分を覆うように差込角部をネジによって連結しているものです。つまりヘッド接続部分の応力を分散させているのです。また差込角部の素材と熱処理硬度を改良し、最大トルク789N・mニュートンメートル(80kgf・m)という高い限界能力を持っております。3/8インチの標準タイプのツールではどうしても力不足でネジが緩まない状況は日常のメンテナンスにおいても結構あるものです。もしその度にハンドルにパイプなどをつないで力を加えることによってツールを破損してしまう恐れがあることを考えると、1/2インチのロングフレックスハンドルを1本だけでもご自身のツールのラインナップに加えることは、きっと正しい選択ではないでしょうか。いや足回りなどの調整等で大きなトルクが必要なときにはむしろ不可欠なツールといえるでしょう。