『クルマやバイクいじりの基本はネジの脱着です。』

すなわちネジと上手につき合えば、自ずとメンテナンスというものはうまくいくものです。そしてこれらのネジ類を脱着するための最もベーシッ クなハンドツールと呼べるものが、おそらくスパナやメガネやコンビネーションといったものでしょう。ラチェットハンドルがソケットやエクステンションなどと連結してはじめて使えるようになるツールに対して、これらはそれら単独で作業能力があるため、様々なメンテナンス作業において、使用頻度が高いツールと言えます。
それではこれらのツールについて順にもう少し詳しく解説するとしましょう。

●スパナ(Spanner/Openend wrench)

頭が六角形状のネジを回す工具としては、スパナは最もオーソドックスなツールです。

車載工具の中にも入っていたり、また工具を表すイラストのシンボルマークにもよく使われたりして、世間では一番よく知られた存在であり、ハンドツールの元祖や代表格のようにも取り扱われています。実際、工具の普及率もドライバーと共に上位を占め、みなさんのご家庭においてもきっと何本かのスパナがあるのではないでしょうか?

そんなメジャーな存在のスパナですが、バイクやクルマのメンテナンスにおいてはそれほど出番は多くありません。これはおそらくスパナの持つアバウトな性格、すなわち六角ネジの二辺でしか掴むことができないとか、あまり大きなトルクを掛けられないということから、その存在がコンビネーションレンチにとって変わられたと言っても過言では無いでしょう。だからといってスパナが世の中から全く無くなってしまうことはまずないでしょう。それはメガネレンチやソケットレンチでは絶対にできない作業があるからです。

例えばパイプの中間にあるナットや両端を固定したワイヤーの間のナット、またダブルナットの締緩作業は口が開いたスパナが大変有効なわけです。確かにメガネレンチやソケットレンチの方がネジの六面に接触して大きなトルクを与えることができるのですが、スパナは単に仮締め用の工具というわけではなく、スパナにはスパナ本来の役割があるというわけです。

また便利な使い方としてハンドルに対するスパナの口の曲がり角の15度 を利用したものがあります。それは表と裏を巧みに使い分け、ネジの頭にレンチを掛けかえて操作するというものです。この操作を繰り返すことによってレンチとネジの角度が微妙に変わり、狭い場所でもネジを回転させることが出来ます。

 

上写真は、スパナの仲間であるフレアナットレンチ
このような状況下であるとコンビやメガネあるいはソケットレンチでは作業できません。

上写真は、FN-6S 6本組フレアナットレンチのフルセット。
10×12・11×13・14×17mmフラットタイプ、15度アングルタイプ各1本。アルミケース入りでメーカー小売希望価格は10,760円です。



ラピッドギアレンチのスパナ部

スパナ部の特殊形状により、ボルトやナットに対して、掛け替えることなくラチェット感覚で作業ができ、早まわし効果が抜群です。但し、ハンドルの振り幅が60度必要になります。

スパナには他の工具と同様にJIS規格(日本工業規格)によってニ面幅寸法の基本サイズが5.5ミリから80ミリ。またスパナ部のハンドルに対する口の曲がり角は15度、先端部分の形状に丸型・ヤリ型、あるいは全長など色々と決められています。しかし実際の作業をする上での使い勝手から言えばJIS規格だけにこだわっていると使いにくいところもあります。

そこで従来までのJIS規格にはとらわれずに、作業性を重視した次の様な少し変わったスパナの仲間も登場してきています。

一つめはKTC(京都機械工具)のプロフィットツール。超薄口というのが身上で、従来品スパナに比べて肉厚の薄い設計です。特に先端部分がテーパー状に薄くしてあり、また両口スパナの片方の立ち上がり角が25度付けているのが特徴的です。従来のスパナでは使いにくいキャブレター回りやマニフォールド取付部分など特に狭い場所やボルトやナットが薄い場合には大変有効です。

二つめはFACOM(ファコム)のファーストアクションレンチ40RとSNAP-ON(スナップオン)や弊社SEK-TOOLSブランドのラピッドギアレンチのラチェット式スパナレンチのスパナ部にあります。
通常のスパナの形状とは異なり、特殊なラチェットスパナ加工を施しているためボルトやナットに対して掛けかえることなくラチェット感覚で作業できるため早回し効果は抜群です。但し、ラチェット効果を期待するにはハンドル振り幅の角度が60度になるため十分なスペースが必要条件となります。

工具の世界ではメジャーな存在のスパナですが、バイクやクルマのメンテナンスにおいてはそれほど出番は多くありませんと文頭で言いましたが、そんな中スパナの仲間で新しい新境地を築こうとしている商品もあるということです。

●メガネ (Boxend wrench)

メガネレンチは狭い場所や奥深い場所また使い勝手のことを考慮し、実に数多くのバリエーションがラインナップされています。オフセット角が大きいものや逆にオフセット角が全く無いストレートなもの、あるいは柄の部分がS字型に曲がっているS字レンチや弓なりにカーブしているハーフムーンレンチと呼ばれているもの、また長さもスタンダードなものからロングタイプにショートタイプといったものまで様々。最も使用頻度が高いツールならではのバリエーションの多さと人気の高さをこのあたりからも伺うことが出来ます。

またハンドツールの分類上、メガネレンチの仲間に入るもので、フレックスソケットレンチというものがあります。ところで『フレックスソケットレンチ』という名称を聞いただけで、すぐにその姿や形を思い浮かべることができる人は、かなりの『工具通あるいはツールマニア』の域に達している人と言えるかもしれません。つまり数あるハンドツールの中でそれほどポピュラーな存在のものではないと言えます。実際に工具の販売店でお目にかかれないこともあるし、ましてや日本のツールメーカーにおいては製品のラインナップに加えていないところも数多く有ります。

一方、海外メーカーの多くはダブルエンド(Double End)、フレックスボックスレンチ(Flex Box Wrench)、ダブルエンドフレックスジョイントスパナ(Double Ended Flex-joint Spanner)、ダブルエンドスイベルレンチ(Double Ended Swivel Wrench)といった呼び名で名称こそメーカーによって色々と異なりますが、やはりメガネレンチの分類でカタログに掲載されています。当社においても長年、特に欧米向けに輸出をしている関係で昔からダブルフレックスレンチ(俗名:両ブラ)と言う名称で製品ラインナップに加えています。

フレックスソケットレンチの外観は、ハンドル部の両端に異なるサイズのソケットが接続されていて、そのソケット部が首振り機構(フレックス)付きというものです。この構造のおかげでハンドル部とソケット部をL字型(直角)にすれば強いトルクをかけることができ、またソケット部をストレートにすればクルクルと早回しすることができるという2通りの使い方ができるというものです。

実際、少し込み入った所にあるネジを緩める場合なんかは、まずL字型にして“ぐいっ”と強めのトルクを与えて、ネジが緩んできたらストレートにして早回しすると言った感じで実に効率的な作業ができるツールなのです。

またこのフレックスソケットレンチには、両端に異なるサイズのソケットを持つダブルフレックスレンチの他にもうひとつ別のタイプがあります。それは片方が通常のスパナ形状でもう一方が同じサイズの首振り機構付きソケット部が付いているものです。当社ではフレックスコンビレンチ(俗名:片ブラ)と呼んでおります。こちらはコンビネーションレンチの仲間といった位置付けになります。だから基本的な使い方として
は、まずスパナ部で仮締めしてからソケット部をL字型に曲げ本締めします。通常のコンビネーションに比べると、ハンドルとソケット部をストレートにしてドライバーハンドルのように早回して、その後L字型に曲げ本締めできるのが最大のメリットです。

 

上写真:SEKブランドのダブルフレックスレンチ(両ブラ)
下写真:SEKブランドのフレックスコンビレンチ(片ブラ)

●コンビネーションレンチ(Combination wrench)

使う頻度や知名度から言ってもソケットレンチに次いでポピュラーで実用的な存在のコンビネーションレンチ。

一般的には片目片口スパナや片目片口レンチとも呼ばれています。スパナとメガネを繋ぎ合わせたような形状をしていることがその名前の由来です。コンビネーションレンチはスパナやメガネのように1本に2つのサイズを持っているわけではなく同じサイズのスパナ部とメガネ部が存在しています。つまり形は違うがサイズが同じ工具が一体化している状態のツールというわけです。原則的な使い方としてはスパナ部で早回し、メガネ部で本締めできるという合理的なものであり、日常のメンテナンス作業においても使用頻度が高い工具と言えます。

JIS規格(日本工業規格)では、2面幅寸法の基本サイズは、5.5mmから55mmまで32種類。またスパナ部のハンドルに対するスパナの口の曲がり角は15度、一方のメガネ部のオフセット角も15度と、基本規格はスパナとメガネレンチのそれぞれのJIS規格と同じ数字になっています。またハンドルの部分の長さは、スパナとメガネレンチの中間的な仕様になっています。しかし、実際の作業をする上での使い勝手から言えばこのJIS規格だけにこだわっていると使いにくいところがあります。したがってスパナ同様に、各メーカーからショートタイプやロングタイプそれに中間サイズのミドルタイプ、またスナップオンにはさらに短いミジェットタイプというものもラインナップされています。

さらにメガネ部にラチェット機構を組み込んだタイプもあります。これはレンチをボルトやナットから外すことなく連続してスピーディーな作業ができるのが特長です。そんな便利なラチェット式ではありますが、全く問題がないというわけではありません。従来のラチェット式の多くは、内部がギア構造のため本締めするとギアが破損してしまうというトルク的な心配があり、いわゆる仮締め用というものでメガネレンチの本来の役割を達するものではありませんでした。またギア構造を持たせるためにメガネ部の厚みと外径が大きくなりすぎて使う場面が限定されるというのが現状でした。

 

そこでお勧めするのが、
『72山のギアで本締め作業ができる
Pro-Autoギアレンチのメガネレンチとコンビネーションレンチのシリーズ※』
です。

狭い場所での作業性の良さという点においては、メガネ部の外径や厚みの大きさに加えて本体の外観上のスリムさは当然の事ながら、ラチェットを比較する時にはギア数(歯数)というものがよく引き合いに出されます。

具体的に72山と24山を比較してみると 前者は360÷72で1ギアあたり5度(送り角度5度)後者は360÷24で1ギアあたり15度(送り角度15度)つまりハンドルの振り幅が制約されているような狭い場所でも作動角が小さく余裕を持って作業することが出来ます。ラチェットハンドルとソケットを組み合わせて使用するような場合には
エクステンションバーなどを利用することによって、使用条件のよいところまで迂回して使うこともできるわけですが、メガネやコンビの場合にはそういうわけにもいかず、振り幅が制限されているような場所での
作業性はギア数がカギとなるわけです。

また従来のラチェット式のメガネ部というものは、過重を掛けたときにトルク的に心配な点も多く、中には仮締め専用と明記しているものもあります。これに対してギアレンチのシリーズは確実な本締め作業を可能
にした点が非常に大きいと言えます。
ちなみに各サイズの最大過重は以下の通りです。

 8ミリ   35ニュートンメーター(N・m)
10ミリ   71
11ミリ   81
12ミリ   91
13ミリ  115
14ミリ  158
17ミリ  267
19ミリ  323

例えば、一般的な普通ボルトの呼び径M8(六角部の対辺寸法12ミリ)ネジの標準締め付けトルク※は12.5 N・m、車両やエンジンによく使われている1.8系列のM8ボルトは22N・mですからトルク的にも十分余裕を持って本締め作業ができるわけです。

またこのギアレンチのシリーズには、フレックスタイプ(首振り)というものもあります。従来の表裏で(締めると緩める)操作するワンウェイタイプのラチェット式コンビは片側だけにオフセット角を付けることが出来なくすべてストレートな形状でした。このため場所によっては手が邪魔したり使えないところもありました。しかしフレックスギアレンチは、首振りのヒンジまでの長さを極力短く設計し、また180度無段階のフレックス機構によって、手狭な場所でも微妙にハンドルの角度をかえることができ、大幅に作業性が向上しています。

Pro-Autoギアレンチシリーズ
詳細・価格は、
ギアレンチ・スタビーギアレンチ
ダブルギアレンチ・ダブルフレックスギアレンチ
フレックスギアレンチ
をご覧ください。

上記で紹介したギアレンチのシリ−ズをはじめ、豊富な種類を持つメガネレンチやコンビネーションレンチやスパナといったハンドツール。どのツールが一番使いやすいかというのは、実際に作業する場面や用途によって異なるので一概には言うことはできませんが、工具箱から手軽にさっと取り出せ、スピーディーかつ確実なネジ締め作業が出来るツールということは間違いありません。

工具を何十年も使い続けているベテランのメカニックよりもこれからメンテナンスを始めようとしている人やまだまだメンテナンス初心者の人あるいは不器用な人こそ、機能性に優れる上記で紹介したような商品に是非とも目を向けて下さい。
きっとメンテナンスの効率も向上するはずです!