【ロッキングプライヤー】
ロッキングプライヤーは数あるハンドツールの中でも、万能ツールと呼ばれることがあります。万能ツールやマルチツールと呼ばれるものは、総じて「何にでも使える」と謳われます。しかし「機能が多すぎる」あ
まり、実際の使用時には、得てして使いづらいものになってしまいます。このためプロの整備士や熟練したメカニックの人たちは、そういうたぐいのものをあまり使いたがりません。しかしながら、ロッキングプライヤーというものはプライヤーの一種とはいうものの、他に類をみないほどの万能ツールと言える逸品と言えます。
そこでロッキングプライヤーの代名詞になっているバイスグリップ(VISE GRIP)についてもう少し詳しく解説します。バイスグリップというものは、今世紀の初頭1924年にデンマークからアメリカに移民してきたアイデアマンであった鍛冶屋の主が、特許局にひとつのユニークな工具に関する特許を申請、そして見事『テコの原理を利用して軽く握るだけでロックできる頑丈なプライヤー』の特許認可を受けました。彼の名は、“ウイリアム・ピーターセン”。彼の開発したバイスグリップというものがロッキングプライヤーの元祖というわけです。その外観は、一見すると普通のプライヤーと同じようですが、中身の方は全く異なり対象物をしっかりとくわえたままそのアゴの部分をパチンとロックできるという便利な機能が付いていることが何よりも特徴でした。その万力(バイス)に似た機能から『VISE
GRIP』と命名されたわけです。
バイスグリップの商品の長所としては、まず第一に信頼性が非常に高いことです。本体のアゴ部分は、強靱な鍛造仕上げでしかも2段の滑り止め加工を施しているところが高性能の秘密であります。また1年間の保証付きと銘打っているところからもその信頼性が伺う事が出来ます。そして第ニに、通常のプライヤーの支点が1つだけであるのに対してバイスグリップの方は、4ケ所もの支点を有しテコの応用により人間の小さな力で大きな挟み込む力を発揮できるという構造的な特徴があります。第三に強固なロック機構付きのため、挟み込む力を保持できるようにしていたことも見のがせない長所のひとつと言えます。
使い方もいたって簡単です。まず本体のアジャストボルトを調節して、アゴの幅をまずは適当に合わせそれで一度締めてみます。もし対象物に対して緩すぎれば、いったんはずして再度アジャストボルトを締め込む、反対にきつくて締まらなければ、アジャストボルトを緩めてみる。あまりきつく締め付け過ぎると相手の対象物も傷めてしまいますし、本体のアゴにも負担がかかりますのでウエスなんかを1枚はさんでバイスグリップをロックするとよいでしょう。ところでこのバイスグリップが万能ツールと言われるのには、1
本で数種類の工具を兼ねるものであるといことが言えるのですが、『これにはどういった使い方があるのでしょうか?』
おもに次のような使い方ができます。
●通常のプライヤーのように対象物をしっかり挟み支持できること。
●レンチの代用としてボルトやナットを締めたり緩めたりできること。
●ドライバーでは回すことができない+字や-字の頭のなめた小ネジにかませて回すことができる。
●パイプレンチとして代用できる。
●小さな小片をグラインダーで加工する時、しっかりとくわえて作業することができる。
●溶接や穴明けの時、万力の代用としてパーツ類をしっかりと保持することができる。
●接着や接合には、万力の代用として手っ取り早く強力な締め付けをすることができる。
●バールの代用として釘抜きにも使用できる。
●のこ刃ややすり等の応急用のハンドルとして使用できる。
上記のような使い方以外にも、ケースバイケースでもっといろいろな使用方法がきっとあることでしょう。この多機能の実現には、テコを応用した構造が大きな役割を果たしていることはいうまでもありません。
また一口にバイスグリップといっても、バリエーションが実に豊富です。アゴの形状によりオーソドックスなものから溶接用、配管工事用、板金作業用などおよそ25タイプあります。
なかでもバイクやクルマのメンテナンス用としては、曲線アゴタイプの10WRとロングノーズタイプの9LNあたりをお勧めします。両者とも全長が210mm前後でちょうど使いやすいくらいの大きさで、口を開けることができる開口値は、前者が47ミリ、後者が76ミリです。また両者ともピアノ線も一発でカットできるワイヤーカッター付きということですから応急処置用工具としては、これ以上ない便利なアイテムです。車載工具に純正で入っているプライヤーとは比べようもありません。というのは、通常のプライヤーで対象物をつかんで回そうとした場合には、つかみながら回すということになり作業者のつかむ力と回す力が分散されてしまうわけです。これに対してバイスグリップの場合は、つかむ力はロック機構により確実に排除され、回す力だけに集中することができますので楽に作業することができるというわけなんです。このあたりがバイクやクルマのメンテナンス用としてお勧めする理由のひとつです。
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一口にバイスグリップといっても、バリエーションが実に豊富です。アゴの形状によりオーソドックスなものから溶接用、配管工事用、板金作業用などおよそ25タイプあります。
◯先端部を細くし狭い場所での作業性をよくしたロングノーズタイプ
(4LN,6LN,9LN)
◯ロングノーズタイプにさらに35度の角度を付けたベントノーズタイプ
(4BN,6BN,9BN)
◯丸物をよりしっかりくわえやすくした曲線アゴタイプ
(4WR,5WR,7WR,10WR)
◯直線アゴタイプ(7R,10R)
◯Cクランプタイプ(6R,11R,18R,24R)
◯板金用タイプ(8R)
◯溶接用タイプ(9R)
◯チェーンタイプ(20R)
上写真は、曲線あごタイプのワイヤーカッター付モデル。車やバイクのメンテナンス用としては、曲線アゴタイプの10WRとロングノーズタイプの9LNあたりをお勧めします。
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