それでは、他の主な注意事項について具体的に説明します。
ソケットにしてもスパナにしても、それぞれにサイズというものがあります。だから当然のことですが、六角ボルト・ナットのサイズに合ったものを使用しなければなりません。しかし意外と異なったサイズのものを使用しているケースも多いのではないでしょうか?例えば日本のバイクやクルマとアメリカのものでは六角ボルト・ナットのサイズの単位が違う場合がよくあります。日本の場合はメトリックボルト(ミリ)で、アメリカの場合はインチボルト(1/4、5/16、3/8インチといった分数表示)が広く使用されています。
ここで問題となるのが、単位が違うとぴったり合うサイズはないということです。
たとえば5/16インチはミリに換算すると7.938ミリ、また3/4インチは19.050ミリになります。
それぞれ8mm、19mmの異なったサイズのレンチやソケットでも使えそうに見えます。実際にはめてみても「誤差?」程度のすき間しかできません。しかしこのような過った使い方をすると、むしろ工具よりも大切な相手のボルト・ナットの角をなめやすく、また傷つける結果となってしまいます。だからインチボルトが使用されているアメリカ車等には、必ず専用のインチ工具を使うようにして下さい。
またソケットは完全にナットが隠れるまで差込んで使用すること。スパナでいうと口の奥でボルト・ナットを確実にくわえて使用すること。
そうしないと相手のネジをなめやすく、また不安定な状態で力を入れ過ぎるとレンチがはずれたり滑ったりして大変危険ですので注意して下さい。
またパイプ等を差込んで使用しないこと。
ハンマー等で叩いて衝撃を加えないこと。
足で体重をかけないこと。
等にも注意して下さい。
ソケット、ラチェット等のレンチには、限界トルクがあります。
締め付けられたボルト・ナットが簡単に緩まない場合に上記のような使い方をすると、ボルト・ナットの角が傷んだり、またレンチが破損してしまいます。レンチが破損すると大変危険ですので、くれぐれも力のかけすぎには注意してください。
そうは言っても外さなければいけないケースもあるものです。簡単に外れないボルト・ナットを緩めるときには、あらかじめ浸透性潤滑剤などを使用することをおすすめします。浸透性潤滑剤は、錆び付いたボルト・ナットの間に浸透し摩擦係数を低減させる効果があります。浸透性潤滑用スプレーは、ボルトとナットの接合部の全面にスプレーし、10分程度時間が経過してから、緩め作業に取りかかってください。なお、再度締め付ける場合は、浸透性潤滑剤を良く拭き取ってから締め付け作業をしてください。良く拭き取らないと、トルク係数が小さくなるため締め付け過ぎてボルトが伸び切れる場合があります。つまりレンチに限界トルクがあるように、ネジの方にも限界トルクがあるということです。
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